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香取先生のQ&Aコーナー

オルガン音つくりの第一歩 第26回

●かわら版にも載っておりますがオルガン音作りの第一歩第26回の問題です。

<問題>

今回は、ピアノ伴奏をどう弾くか、ジャズやポピュラー作品の音はどう作るかにトライしてみましょう。
使うオルガンは @アトリオン音楽ホールの楽器 A以下のような仕様の小型の楽器 の2台のが楽器です。

第一鍵盤 Prinzipal 8 Flute 8 Octave 4 Superoctave 2 MixtureV
第2鍵盤 Gedackt 8 Rohlflote 4 Waltflote 2 Dulzian 8 Tremblant 足鍵盤  Soubasse 16 Bourdon 8
U/T U/Ped T/Ped

曲は「虹の彼方に」の伴奏をジャズ・アレンジしたものの一部です。

譜例;

<解答>

伴奏は主鍵盤よりもポジティフ鍵盤を中心に考えることを基本にします。
アトリオンでは第2鍵盤Positifになります。

・ジャズなどポピュラー音楽ではSwell鍵盤の音が効果的な場合が多いです。
アトリオンでは第3鍵盤Recitです。

他の楽器とのバランスはswellシャッターを使いながらコントロールすることも考慮に入れます。複数のストップを使うとそれだけでボリュームが大きくなります。

以上のようなことを押さえつつ考えていきます。
実際には第3者に聴いてもらって、バランスを取ることが必須です。
ここではレジストレーションの可能性についてのみ言及します。
まず、ピアノ・アレンジの楽譜でペダルをどう使うかですが、この楽譜にはコードネームが書かれているので、ペダルはその根音を弾いていくことが可能です。
ペダルは手鍵盤の音色にSoubasse16’を加えた程度で自然になじませるようにします。

可能性の例
アトリオンの場合;
第3鍵盤 Viole de Gambe8’ Voix-Celeste8’ (この組み合わせは、ピッチの異なる8‘を重ねて唸りが生じます)
第2鍵盤 Salicional8‘ あるいはBourdon8’  V/U
ペダル  Soubasse16’ V/P
小型のオルガンの場合;
第2鍵盤 Gedackt 8 Rohlflote 4 Tremblant
第1鍵盤 Flute 8 U/T
ペダル  Soubasse16  U/P
ハモンドオルガンのようなポピュラー音楽に使うオルガンをイメージしつつ、ストリング系の倍音を多く含む8フィートの細い音を基本とするとよいかもしれません。
機会があったら楽しんでみてください。

オルガン音つくりの第一歩 第25回

<問題>

今回は久々にフランス古典にトライしてみましょう。アトリオンの楽器はフランス古典が美しく響く、日本でも数少ない楽器のひとつです。

あっという間に1月も終わり、今年は2月22日から受難節(レント)に入ります。
そこで今回は、聖木曜日に歌われる"Pange lingua gloriosi corporis mysterium"を定旋律に使った二コラ・ドゥ・グリニー(Nicolas de Grigny)の賛歌“Pange lingua”の3曲を取り上げます。フランス古典は基本的にレジストレーションが決まっています。それをアトリオンの楽器ではどう対応していくかを考えます。
まずは3曲それぞれの基本的なレジストレーションを、それから実際のアトリオンの楽器での対応を考えるという2段重ねのワークです。
ちょっとレベルアップしますが、アトリオンの楽器の基本コンセプトはアルザスのジルバーマン、つまりフランス古典の楽器にあります。是非皆さんにもフランス古典を弾いていただきたいと考えています。

 1. Pange lingua en taille a 4 (Plein jeu) ⇒テノールに定旋律を持つ4声の「パンジェ・リングァ」
 2. Fugue a 5 ⇒5声のフーガ
 3. Recit du Chant de l’hymne precedent ⇒前曲の賛歌のレシ

楽譜は https://imslp.org/wiki/Pange_lingua_(Grigny,_Nicolas_de) から探せます
そして、カトリックの過越の聖なる3日間についても↓のカトリック中央協議会のサイトから学んでみてください。
https://www.cbcj.catholic.jp/catholic/tenrei/sugikoshi3/


<解答>

パンジェ・リングァ"Pange lingua gloriosi corporis mysterium" は,聖木曜日の「主の晩餐の夕べのミサ」の終わりに聖体を移動させる (イエスがゲツセマネの園に向かうことを象徴) 行列で歌われます。その他キリストの聖体の祭日の晩課でも使われるそうです。
その様子がyoutubeで見られますので、興味のある方はご覧ください。
https://youtu.be/cMZYg1SmFVY
尚、グレゴリオ聖歌の旋律はグリニの使用したものと若干異なります。

それでは、ドゥ・グリニーのPange linguaを見ていきましょう。
第1曲  Pange lingua en taille a 4 (Plein jeu) 
テノールに定旋律を持つ4声の「パンジェ・リングァ」は、ペダル声部でグレゴリオ聖歌の旋律を弾きます。そして、最初の小節を見るとPlain Jeuという表記があります。
Plain Jeuのレジストレーションは ニヴェールやレゾン、そしてボワヴァンやG.コレットが残しています。

Bourdon16, Montre8, Bourdon8, Prestant, Doublette, Fourniture, Cymbale (Nivers, Raison)

  GO: 16, Montre8, ZBourdon8, prestant, Doublette, Fourniture, Cymbale
  Pos: Bourdon8, Prestant, Doublette, Fourniture, Cymbale
  Claviers accouples (Boyvin, G.Corrette)

これらからアトリオンの楽器でレジストレーションしてみましょう。
まずは、
第一鍵盤Grand Orgue :Bourdon16, Montre8, Prestant, Doublette, Fourniture, Cymbale
第二鍵盤 Positif:Bourdon8, Prestant, Doublette, Fourniture
 カプラーをかけた方が厚みのある音になりますので、今回はカプラーを用います。
ここまではとても簡単。では、ペダルは? 

当時、ペダル鍵盤は初期にはTrompette8のみ、後に Flute(フルートといっても太めのプリンシパル系)加えられた程度で、足鍵盤はあまり使われていませんでした。
グレゴリオ聖歌の定旋律にはペダルのTrompette8を用います。また、ペダル鍵盤はGOとのカプラーを持っており、これを使ってあげると手鍵盤の厚みに負けないで定旋律が浮かび上がってきます。

第2曲  Fugue a 5
5声のフーガ
左手から始まる最初の小節にはCromorne 、右手が始まる3小節目にはCornetの表記があります。ペダルはPedalleとのみ記され、ストップの指示はありません。

アトリオンの楽器ではCromorneは第2鍵盤Positifに、そしてCornetは第1鍵盤Grand Orgueにあります。
しかし、フランス古典のCornetの指示はGOのそれではなく、第3鍵盤や第4鍵盤にあるCornetをさしています。
実はアトリオンの楽器の第3鍵盤はロマン派の作品を弾くのに必要なストップ群が置かれていて、Cornetはありません。

そこで一つの解決方法として、Cromorneの代わりにGOにあるVoix-Humaineを使ってみます。そして、Cornetの組成と同じものをPositifで作ります。
Bourdon8, Flute a cheminee4, Nazard22/3, Tierce13/5
Voix-Humaineは小さいリード管なので、Doubletteは入れなくてもよいと思います。

最後にペダルですが、Pedale de Flutesと考えます。先にも書いたようにこのFluteはプリンシパル系なので、Montre8でよいでしょう。
あとは、響きのバランスを聴いて調整していきます。

第3曲 Recit du Chant de l’hymne precedent
前曲の賛歌のレシには何の表記もありませんが、楽譜を眺めるとRecit de tierce en taille (レシをテノール声部で)であることが分かります。レシは8小節目のテノール声部から始まります。

Recit de tierce en tailleは レゾンとショーモンのレジストレーションが残っています。
GO: Bourdon16, 8, Prestant  Pos; Bourdon8, Prestant, Nazard, Doublette, Tierce
Pedale de Flutes (Raison)

GO.: Bourdon16(ou Montre16), Bourdon8, Prestant  Pos: Bourdon8, Prestant, Flute, Nazard, Doublette, Tierce, Larigot   Pedale de Flutes (Chaumont)

アトリオンの楽器では、GOのBourdon16、Bourdon8,それにPrestantを加えると大きすぎる可能性もあるので、Flute4で代用することも可能です。
レシはBourdon8, Prestant, Nazard, Doublette, Tierce, (Larigot)
ペダルはSoubasse、Flute8
ペダルを8フィートのみにすると、6、7小節で16フィートを入れた手鍵盤の伴奏声部がペダルより低くなり声部が逆転してしまうため、ペダルにも16フィートを用います。

オルガン音つくりの第一歩 第24回

<問題>

大川西根小学校で8月に行った WS では、ブルグミュラー 25 の練習曲 op.100から選曲した子どもさんが数名いました。オルガンでもなかなか美しく響いたので、今回はブルグミュラー25 の練習曲から 3 曲ほど、レジストレーションに挑戦してみたいと思います。
曲はNo.9 La Chasse 、 No.19 Ave Maria 、 No.23 Le Retour の 3 曲です。

ブルグミュラーはパリを中心に活動した作曲家で、まさにA. カヴァイエ=コルが活躍した時期と重なっています。そこで、以下のような小さなロマン派のオルガンを想定してレジストレーションを考えてみたいと思います。C.フランクのレジストレーションが参考になりますよ。

TGrand Orgue URecit expressif Pedal
Montre8 Bourdon 8 Soubasse 16
Flute harmonique 8 Gambe 8 Flute 8
Prestant4 Voix celeste 8 Flute ouverte 4
Flute 4 Flute 4  
Doublette 2 Nazard 22 /3  
Fourniture V Octavin 2 U/T/P U/P
Trompette8 Hautbois 8  

<解答>

ブルグミュラーの音楽をオルガンで弾いても違和感がないのはなぜだろう?
彼の生い立ちを踏まえ、少し考えてみました。
彼の父親は、後にデュッセルドルフ市音楽監督になったヨハン・アウグスト・フランツ・ブルグミュラーで、オルガン奏者でもありました。
恐らくブルグミュラーは幼いころから父親のオルガンの響きを聴いて育ち、オルガン的な響きが彼の音楽に影響をもたらしているのではないかと想像しました。(あくまでも「想像」ですが…)

さて、それではフランス・ロマン派のオルガンをイメージして音を作ってみましょう。なるべくシンプルに、一人でもストップ操作ができるようにするのがコツです。

No.9 La Chasse
出だしの左手の和音は何でしょう?
そう、これは狩りのホルンをイメージさせます。
第2鍵盤のオーボエを使ってそのイメージを出してみます。
第2鍵盤;Bourdon 8, Gambe 8, Flute 4, Hautbois 8 こんな感じではどうでしょうか?

そして、右手のオクターブで刻むリズムは馬がまるで走っているかのよう。
これは第一鍵で軽快に且つ勇壮に出したいと思います。
第1鍵盤;Montre 8, Flute harmonique 8, Prestant 4
9小節目のpでは4フィートを抜きます。

13小節目からは両手とも第2鍵盤、21小節目から、ふたたび最初と同じレジストレーションに戻り、25小節目のpから第一鍵盤の4フィートを抜きます。

29小節目は両手とも第2鍵盤、37小節目から最初と同じレジストレーション41小節目かのpで4フィートを抜きます。

48小節目の右手は4フィートを足し、53小節あるいは54小節目から4フィートを抜きます。最後の和音は第二鍵盤で4フィートを抜いてswellシャッターを閉めていきます。

No.19 Ave Maria
タイトルから想像できるように、4声体のコラールがイメージされています。
第2鍵盤;Bourdon 8, Gambe 8, Voix celeste 8で 声楽のようなイメージで始めるのはどうでしょう?
9小節目からは左手が第一鍵盤に移ります
第1鍵盤;Flute harmonique 8 U/T

そして17小節目からは左手に動きが出てきます。ここは両手とも第一鍵盤で弾きます。
楽譜には書かれていませんが、↓の楽譜のようにペダルで和音を支えてみてはいかがでしょうか?
ペダル;Soubasse 16, Flute 8

そして最後の2小節は第2鍵盤で弾きます。swellシャッターを次第に閉めると効果的だと思います?

No.23 La Retour
この曲は学校からの帰り道、何だかワクワクするような、小走りで家路に着くような感じがします。

第2鍵盤;Bourdon8, Flute 4, Hautbois 8
第1鍵盤;Flute harmonique 8 U/T

最初の8小節目まで右手は 第1鍵盤 左手は第2鍵盤
9小節目から両手とも第2鍵盤
17小節目から第1鍵盤にMontre 8を加え、左手が第1鍵盤に移ります。19小節目pで左手は第2鍵盤に上がり、21小節目から25小節目の頭の8分音符までふたたび第1鍵盤に移ります。その後は最後まで両手とも第2鍵盤で弾きます。
最後の2小節では第2鍵盤の4フィートを抜き、swellシャッターを閉めていきます。

以上3曲のレジストレーションを試してみましたが、ほとんど同じような音になってしまいました。でも、フランス・ロマン派的な響きにはなると思います。

2フィートなどの高いピッチを加えて試してみることも可能だと思いますが、あまり安定感のない響きにならないように注意する必要があります。Ave Mariaで試したように、ペダルを加え、低音部の支えを作ったりするのもひとつの方法です。
色々な可能性があると思いますので、お時間があったら是非ご自分で試してみてください。

オルガン音つくりの第一歩 第23回

<問題>

今回はオルガン曲ではない作品をオルガンで弾くことにトライしてみます。
オルガン曲には基本的なレジストレーションが決まっているものも多いですが、オルガン曲ではない作品は各人が作品に抱くイメージから音を作ります。

曲目はヘンデルの組曲ホ長調エアと変奏曲"調子のよい鍛冶屋(愉快な鍛冶屋)"から始めてみましょう。
ピアノで弾かれることが多い曲ですが、各変奏曲をどういう音で弾いたらよいか考えてみてください。正解はありません。

オルガンはペダルを持たないポジティフオルガンを使ってみましょう。

第1鍵盤 Rohrflote 8 Prinzipal 4 Gemshorn 2
第2鍵盤 Bourdon 8 Spitzflote 4 Nazat 2 2/3 Prinzipal 2

楽譜は
https://imslp.org/wiki/Suite_No.5_in_E,_HWV_430_(Handel,_George_Frideric)
 からも探せます。

<解答>

「調子の良い鍛冶屋」はご自分、あるいはピアノの生徒さんに課題として与えられたこともあるのではないでしょうか?
さて、それをポジティフオルガンで弾くにはどうしたらよいか?
まず、左手の動きに注目してください。
和声的な動きをしているのか、音価の小さな音符で動き回っているのか…

たとえば「調子の良い鍛冶屋」の第4変奏のような動きのある左手をBourdon8’一本だけで弾いてみましょう。発音も明瞭ではなく聴き取りにくく、軽快な 動きが出せません。
反対に第3変奏の左手は、Bourdon8’を右手の動きに添えるように使うことができます。
また、第5変奏曲のように速い動きに特徴がある場合、高いピッチを入れないと発音も遅れがちになり、一つずつの音の粒を際立たせることができません。
そんなオルガンの楽器としての特性も考え合わせながらレジストレーションしていくことが大事になります。

それでは始めてみましょう。
冒頭のAir、「調子の良い鍛冶屋」という通称があるくらいですから、ソプラノの旋律はリズミックで明るく力強い曲です。私は第一鍵盤のRfl8‘とP4’で弾いてみたいと思います。

第1変奏は右手で細分化されたメロディを弾きます。ちょっと楽譜を眺めると右手と左手をそれぞれ別の鍵盤で弾くこともできそうで すが、3小節目の右手の和音、4小節目の1拍目を見ると、別々の鍵盤だと不自然になりそうです。
そこで、まずは第2鍵盤のBd8’とSpfl4’で軽快さを出すことにしました。

第2変奏は細分化された動きが左手に移ります。ここで第2鍵盤に2‘を加え、左手の動きを明快にさせます

第3変奏はさらに細分化されたメロディが右手に出てきます。この変奏は右手と左手を別の鍵盤で弾くことができます。右手を第2鍵盤Bd8’ Spfl4’ Nasat22/3’でソロとして、左手をRfl8’で添えるとどうでしょうか?

第4変奏は左手が細分化された動きになります。
ここには少ししっかりとした支えのある音色が欲しいと考え、両手とも第一鍵盤Rfl8’ P4’で弾きたいと思います。尚、第3変奏の最後、右手の2拍目の2つめの音から第一鍵盤に降り、そこでP4’を加えるとよいかもしれません。

第5変奏、フィナーレは第一鍵盤Rfl8’ P4’ Gemshorn2’で華やかに。カプラーをかけてもよいかもしれません。第2鍵盤はBd8‘ Spfl4’ P2’

いかがでしたでしょうか? 皆さんもさまざまな曲をオルガンで弾いてみてください。レジストレーションの楽しさ、難しさ?も分かると思いますよ!

オルガン音つくりの第一歩 第22回

●8月のかわら版に掲載した香取先生のクイズの解答をいち早くお届けします!紙面での掲載は来月11月です。お楽しみに

<問題>

さて、今回はみなさんの前にこんなオルガンがあったと仮定しましょう。

T(Hauptwerk)主鍵盤 U(Ruckpositv)第2鍵盤 Pedal
Prinzipal 8‘ Gedackt 8’ Subbas 16’
Rohrflote 8’ Prinzipal 4’ Prinzipal 8’
Oktave 4‘ Koppelflote4 ’ カプラー
Gemshorn 2‘ Oktave 2’ U/T
MixturV Quintflote 11/3’ T/Ped
      Krummhorn 8’ U/Ped

そして弾いてみたいと思う曲が以下のように4曲あるとします。
まず、この4曲のレジストレーションの可能性を考えてみましょう。1曲に1種類ではなく色々頭を巡らせてみてください。すると、レジストレーションの困難な曲も含まれていることが分かってきます。はたしてそれはどの曲か、そしてそれはなぜなのか?
考えてみてください。

  • J.S.Bach Praludium und Fuge a-moll BWV543

  • J.S.Bachのコラール編曲より
  • O Mensch, bewein dein Sunde gros BWV622           (Orgelbuchlein)
  • Wachet auf, ruft uns die Stimme BWV 645             (Schublerchorale)
  • Kommst du nun, Jesu, vom Himmel herunter BWV 650      (Schublerchorale)

楽譜をお持ちでない方はIMSLPなどで検索してください。

<解答>

それでは一曲ずつ考えていきましょう

まずJ.S.Bach Praludium und Fuge a-moll BWV543

前奏曲とフーガの基本はプリンシパルコーラス
この楽器を見るとプリンシパルは主鍵盤にPr8 Okt4 Mix.V 第2鍵盤にはPr.4 Okt2があります。
主鍵盤 Pr8 Okt4MixV 第2鍵盤 Ged8 Pr4 Okt2  U/T
Ped. Sub16 Pr8 I/P
が、まず考えられます。
曲によって主鍵盤Gemshorn2‘ 第2鍵盤Quintflote 11/3’を加えて音に厚みを出すことも可能です。

次はJ.S.Bachのコラール編曲より
O Mensch, bewein dein Sunde gros BWV622 Orgelbuchlein

この曲は2つの鍵盤が必要になります。
この楽器では、まずソプラノのコラール旋律をPr8で弾くことを考えます。
では、左手の伴奏部分は?
第2鍵盤のGd8、これでバランスが悪ければKoppelflote4 ’を加えてみます。そしてPed.にはSub16 U/pedでしょうか?
ただこれだと、伴奏部に4‘があるのでソプラノと逆転することがあります。
そこで、もう一つトライするのは旋律を第2鍵盤Koppelflote4 ’ Oktave 2’ Quintflote 11/3’でオクターブ下げて弾くことです。もう一案としては第2鍵盤のPr4を1オクターブ下げてみることも考えられます。
その場合伴奏は主鍵盤Rf8でシンプルに。Ped1はSub16 T/Ped
いずれにしても、旋律と伴奏のバランスは大切です。尚、このコラールのように装飾が多い作品には発音の遅いリード管は通常用いません。

さて、残りの2曲はSchublerchorale に含まれるものです。
6曲のシュープラーコラールはカンタータを原曲とし、バッハ自身によるレジストレーションの書き込みのあるコラール集です。

Wachet auf, ruft uns die Stimme BWV 645

コラール旋律はテノールにあります。そしてコラールは装飾もなくシンプルに提示されています。
この場合は比較的大きな音の発音のよい8フィートのリード管を用いることが有効です。
コラール旋律はKrummhorn 8’
伴奏はRf 8 Okt4 ペダルはSub16 Pr8 で試してみます。

Kommst du nun, Jesu, vom Himmel herunter BWV 650

この曲は冒頭にペダルは4フィートと指示があります。
手鍵盤には何ら指示はありませんが、右手と左手の声部が交差するところが何か所もでてきますので、2つの鍵盤を使うことが必要になります。
ところで、この楽器にはペダルに4フィートがありません。そこでペダルカプラーを使って第一鍵盤のOkt4をペダルに持ってきます。すると残る手鍵盤は第2鍵盤だけとなり、Gd8 Fl4 Okt2 あるいはGd8 Fl4 Quintflote 11/3’が考えられますが、手鍵盤の交差、まったく異なる要素でできている2つの声部であることを考えると「無理やり」この曲を選択するのは賢明ではないと思うでしょう。
もし、ペダルにCholalbass4があれば、右手を第2鍵盤、左手をRf8 (Okt4)で試してみることは可能でしょう。

このようにオルガンのディスポジションは、演奏可能な曲を考える上で非常に重要なものになります。

オルガン音つくりの第一歩 第21回

<問題>
バッハの前奏曲とフーガを弾かなければならなくなったとしたら、あなたはまず何から始めますか?
※今回は実際に演奏する際に気をつけることが解答になります

<解答>
分類してみました。
名称だけだと判別が難しい場合もありますが、とにかく実際に音を出して強さ、音色を確認することが大切です。同じ名称のストップでも、国により、ビルダーにより、楽器によりかなり異なると考えてください。

◆プリンシパル族

各鍵盤の基本となるプリンシパルから1オクターブ高いストップはOctave、2オクターブ高いストップはSuper octaveとなります。
この楽器の場合、主鍵盤Hauptwerk II.Manualは8フィートのプリンシパルの上に4フィート、22/3フィート、2フィート、Oberwerk, III. Manualは8フィートの上に4フィート、2フィート、Brustwerk, I.Manualは4フィートの上に2フィートがあります。ペダルは主鍵盤が8フィートのプリンシパルを持つ場合は、基本的に16フィートのプリンシパルから始まります。ただし、楽器の規模によりペダルでも8フィートから始まるものもあります。

Hauptwerk II. Manual       Oberwerk, III. Manual
PRINCIPAL 8Fus
OCTAVA 4Fus
QVINTA 3Fus⇒5度音
SUP.OCTAV 2Fus
      PRINCIPAL 8Fus
   OCTAVA 4Fus
   SUP.OCTAV 2Fus
                 
Brustwerk, I. Manual       Pedal
PRINCIPAL 4Fus
OCTAVA 2Fus
      PRINC.BASS 16Fus
   OCTAV BASS 8Fus
   OCTAV BASS 4Fus

◆フルート族

フルート族と言っても音色にはさまざまなものがあります。知識として本などで学んだことを実際の音を聴いて自分のことばに置き換えていくと、異なる楽器に接しても音色のイメージを持つことができるようになると思います。

Hauptwerk II. Manual       Oberwerk, III. Manual
BORDUN. 16Fus
ROHRFLOT 8Fus
SPITZFLOT 4Fus
           
      QVINTADEHN 16Fus
   GEDACKT 8Fus
   QVINTADEHN 8Fus
SPITZFLOT 4Fus
FLASCHFLOT 1Fus
                 
Brustwerk, I. Manual       Pedal
GEDACKT 8Fus
ROHRFLOT 4Fus
NASSAT 3Fus⇒5度音
TERTIA  11/3 Fus ⇒3度音
(QVINTA 11/2Fus ⇒5度音)
  プリンシパル族に属する可能性もあり
SUFFLOT 1Fus           
      UNTERSATZ 32Fus(32' + 16')
   SUB BASS 16Fus

◆ストリング族

ヴァイオリンなどの弦楽器は高い倍音を多く含む音色で、それと同様に高音域まで広がる倍音を持つストップです。

Hauptwerk II. Manual
VIOLA DI GAMBA 8Fus

◆混合ストップ

ミクスチュア、ツィンベルはプリンシパル・コーラスの高音部を構成するストップ。単独で使用することは現代音楽を除きありません。

Hauptwerk II. Manual
CORNET 5Fach (ab c1)⇒ソロ用(8',4',22/3',2',13/5')
MIXTUR 4Fach ⇒アンサンブル用
ZIMBELIN 3Fach ⇒アンサンブル用
                 
Oberwerk, III. Manual       Brustwerk, I. Manual
ECHO 5FA. (ab c1) ⇒ソロ用
MIXTUR 3fach ⇒アンサンブル用
ZIMBELIN 2fach ⇒アンサンブル用           
      MIXTUR 3fach ⇒アンサンブル用
Pedal            
PED.MIXTUR (6fach) ⇒アンサンブル用            

◆リード管

上述のプリンシパル、フルート、ストリング、混合ストップはフルー管(唇管)です。
リード管は薄い金属のリードを震わせて発音させるもので、管楽器ではオーボエやクラリネットをイメージすればよいと思います。
ストップにより強さ、音色もさまざまです。ストップ名は実際に存在する(あるいは存在した)管楽器です。
ソロ、アンサンブル使い方もさまざまです。

Hauptwerk II. Manual       Oberwerk, III. Manual
TROMPET 8Fus
CLARIN 4Fus
      KRUMBHORN 8Fus
VOX HUMANA 8Fus
Pedal            
POSAUN BASS 16Fus
TROMP.BASS 8Fus
CLAR.BASS 4Fus
           

注)前回の問題に提示したディスポジション表の「8’」と今回の「8Fus」は表記は異なりますが同じ意味です

オルガン音つくりの第一歩 第20回

<問題>
バッハの前奏曲とフーガを弾かなければならなくなったとしたら、あなたはまず何から始めますか?
※ 今回の問題のオルガンストップは以下の通りです

Hauptwerk II. Manual Oberwerk, III. Manual Oberwerk, III. Manual Pedal
BORDUN. 16’
PRINCIPAL 8’
VIOLA DI GAMBA 8’
ROHRFLOT 8’
OCTAVA 4’
SPITZFLOT 4’
QVINTA 3’
SUP.OCTAV 2’
TERTIA 2’
CORNET X (ab c1)
MIXTUR W
ZIMBELIN V
TROMPET 8’
CLARIN W’
 
QVINTADEHN 16’
PRINCIPAL 8’
GEDACKT 8’
QVINTADEHN 8’
OCTAVA 4’
SPITZFLOT 4’
SUP.OCTAV 2’
FLASCHFLOT 1’
ECHO X (ab c1)
MIXTUR V
ZIMBELIN U
KRUMBHORN 8’
VOX HUMANA 8’
 
GEDACKT 8’
PRINCIPAL 4’
ROHRFLOT 4’
NASSAT 3’
OCTAVA 2’
TERTIA
QVINTA 1 1/2’
SUFFLOT 1’
MIXTUR V
 
 
 
 
 
UNTERSATZ 32’
(32' + 16')
PRINC.BASS 16’
SUB BASS 16’
OCTAV BASS 8’
OCTAV BASS 4’
PED.MIXTUR Y
POSAUN BASS 16’
TROMP.BASS 8’
CLAR.BASS 4’
 
 
 
 


<解答>
◆初めてのオルガンに向き合ったときにどうしたらよいのか・・・
  1. ①まず、下準備としてそのオルガンのディスポジション表を見つけ、どのような楽器であるかを「知っておく」⇒すでにディスポジション表は「問題」として予め示してあります。
  2. 「知っておく」ということは、オルガンのストップ名からフルー管とリード管を分類できることが前提になります。また、そのオルガンの各鍵盤に与えられた「役割」を読み解くことも必要になります。(鍵盤の配置、名称からおおまかに想像できます。)
  3. さらに、フルー管をプリンシパル系、フルート系、ストリング系と分類します。リード管は、トランペットのように長い共鳴管を持つものと、レガールのように短い共鳴管を持つものでは強さも音色も異なるので、これも分類できるようにしておきます。
  4. ミクスチャーやコルネのような複数のパイプを鳴らす複合ストップについても、どのようなものか確認しておきます。

以上のような作業を実際の楽器に触れる前にやっておくと、楽器に触れるときに多くのストップを目の前にして戸惑うことは少ないはずです。
また、同じ仲間に分類されるストップでも、国によって名称が異なるものも多くありますので、それらをきちんと整理しておく必要があります。
それではディスポジション表から読み取れる情報を、表を作成するなど自分なりの方法で整理することから始めてみましょう!

オルガン音つくりの第一歩 第19回

<問題>
『pp からff まで作ってみよう!』 今回はちょっと目先を変えて、曲ではなく一台の楽器からpp〜ff までのレジストレーションをシミュレーションしてみたいと思います。pp, p, mp, mf,f, ff の6 段階で、どうレジストレーションしたらよいのか? ヒントは音量の小さいストップから、次第に大きな音のストップを加えていく、また、8’ストップから順に4’,2’ と高いピッチのストップを加えていく、という2 点になります。これはレーガーなどロマン派の作品を弾くときに役に立つレジストレーションの方法です。以下のような楽器から考えてみてください。

第1 鍵盤(T) 第2 鍵盤(U) ペダル(P)
Prinzipal 8’
Rohrflote 8’
Oktave 4’
Blockflote 4’
Quinte 2 2/3’
Superoktave 2’
Mixture W
Trompete 8’
Salicional 8’
Gedackt 8’
Gamba 8’
Prinzipal 4’
Holzflote 4’
Gemshorn 2’
Sesquialtera U
Zimbel V
Oboe 8’
Subbass 16’
Prinzipal 8’
Bourdon 8’
Oktave 4’
Rauschfeife W
Basson 16’
Trompete 8’
U /T , T /P, U /P

<解答>
あくまでもシミュレーションの一例です。
実際の曲に適用する場合は、音楽の構造、要求される音、音量に即して、必要なストップを確保する必要があります。

pp
第2鍵盤にシャッターがあれば閉じた状態から始める
カプラーをかければ、第一鍵盤、ペダルでもシャッターの効果を得ることができます
第二鍵盤 Gedackt 8 (Gamba 8’) (Holzflote 4’)      
第一鍵盤 Rohrflote 8’   (U/T)      
Pedal Subbass 16’ Bourdon 8’ (U/P)      

p
第二鍵盤 Salicional 8’ Gedackt 8’ Gamba 8’ Holzflote 4’or Principal 4’    
第一鍵盤 Prinzipal 8’ Rohrflote 8’ (Blockflote 4’) (U/T)    
Pedal Subbass 16' Bourdon 8’ Prinzipal 8’ (U/P)    

mp
第二鍵盤 Salicional 8' Gedackt 8’ Gamba 8’ Principal 4’ ( Gemshorn 2’)  
第一鍵盤 Prinzipal 8’ Rohrflote 8’ (Blockflote 4’) Oktave 4’ (U/T)  
Pedal Subbass 16’ Bourdon 8’ Prinzipal 8’ Oktave 4’ (U/P)  

mf
第二鍵盤 alicional 8’ Gedackt 8’ Gamba 8’ Principal 4’ ( Gemshorn 2’) Oboe8’
第一鍵盤 Prinzipal 8' Rohrflote 8’ (Blockflote 4’) Oktave 4’ Superoktave 2’ (U/T)
Pedal Subbass 16’ Bourdon 8’ Prinzipal 8’ Oktave 4’ (U/P T/P)

f
第二鍵盤 Salicional 8’ Gedackt 8’ Gamba 8’ Principal 4’ ( Gemshorn 2’) Zimbel V Oboe8’  
第一鍵盤 Prinzipal 8’ Rohrflote 8’ (Blockflote 4’) Oktave 4’ Superoktave 2’ Trompete 8’or Mixture W (U/T)
Pedal Subbass 16’ Bourdon 8’ Prinzipal 8’ Oktave 4’ Basson16’ (U/P T/P)

ff
第二鍵盤 Salicional 8’ Gedackt 8’ Gamba 8’ Principal 4’ Gemshorn 2' Zimbel V Oboe8’  
第一鍵盤 Prinzipal 8’ Rohrflote 8’ (Blockflote 4’) Oktave 4’ SQuinte 22/3 Superoktave 2’ Trompete 8’or Mixture W (U/T)
Pedal Subbass 16’ Bourdon 8’ Prinzipal 8’ Oktave 4’ Rauschfeife W Basson16’Trompete 8’ (U/P T/P)

オルガン音つくりの第一歩 第18回

<問題>
前回のコラール曲に続き、今回もJ.Sバッハ(Johann Sebastian Bach 1685-1750)の作品に取り組んでみましょう。
自由な形式の「オルガン曲(幻想曲)ト長調」 Piece d’Orgue BWV572です。桜教会のオルガンで組み立ててみてください。

<解答>
オルガン曲のレジストレーションの参考として2種類出します。 中間部はフランス古典のプラン・ジュ。
最後の部分は、プランジュのまま、あるいは前半のように小さくすることも可能です。

                 
1案)  A  鍵盤U Gedackt 8’ Kopelflote 4’Quinte 1 1/3’
  鍵盤T Rohrflote 8’ Principal 4’
    鍵盤T Gedackt 8’ Kopelflote 4’ Waldflote 2’ Quinte 1 1/3’
     Ped.   Subbass 16’ Flote 4’
    U/T T/P U/P
  鍵盤T Rohrflote 8’ Principal 4 (第一鍵盤で)
    鍵盤U Gedackt 8’ Kopelflote 4’ Waldflote 2’ Quinte 1 1/3’
    Ped. Subbass 16’ Flote 4’
    U/T T/P
   
2案)  A  鍵盤U Gedackt 8’ Waldflote 2’
   B  鍵盤T Rohrflote 8’ Principal 4
    鍵盤U Gedackt 8’ Kopelflote 4’ Waldflote 2’ Quinte 1 1/3’
    Ped. Subbass 16’ Flote 4’
    U/T T/P U/P
   C  鍵盤U Gedackt 8’ Kopelflote 4’Quinte 1 1/3’(第二鍵盤で)
    鍵盤T Rohrflote 8’
    Ped. Subbass 16’
    T/P

オルガン音つくりの第一歩 第17回

<問題>
これまでフランスのロマンや古典を継続してみてきました。
ここであらためてJ.Sバッハ(Johann Sebastian Bach 1685-1750)のコラールに取り組んでみましょう。オルガン小曲集より「われら悩みの極みにありて」Wenn eir in hochsten Noten sein BWV641です。
 ※桜教会のオルガンで、いくつかの可能性を考えてつくってみてください。

桜教会オルガン

第1鍵盤(T) 第2鍵盤(U) ペダル
Rohrflote 8’ Gedackt 8’ Subbass 16’
Principal 4’ Kopelflote 4’ Flote 4’
  Waldflote 2’  
  Quinte 1 1/3’  
  Regal 8’ U/T,T/P,U/P

<解答>
装飾されたコラール旋律が、ソプラノ声部にあります。「2つの鍵盤とペダル」でと指示がありますので、ソプラノ声部と伴奏声部を分けて2つの鍵盤で弾きます。

コラール旋律が細かな装飾を施された場合、Nasat22/3やSequialera(Nasat22/3+Terz11/5)を用いることが多いです。桜教会には残念ながらそれらのストップはありませんが、Quinte11/3を使い右手をオクターブ下げて弾くことも不可能ではありません。Kopelfote4’+Quinte11/3で1オクターブ下げます。場合によってはこれにWaldflote2’を加えることも可能ですが、バランスを聴く必要があります。伴奏部はRohlflote8’ペダルはSoubbass16’に第一鍵盤のペダルカプラーを用います。

もうひとつ、コラール旋律部分にプリンシパル8’を用いる方法もあります。 これも第一鍵盤のPrincipal4’を1オクターブ下げて弾き、伴奏はGedact8’、足鍵盤はSoubbass16’と第2鍵盤のペダルカプラーを使います。ただし音量のバランスの確認が必要です。

コラール旋律にリード管を用いることも可能ですが、装飾の多いコラールの場合、発音のスムーズなリード管であることが前提になります。また、トランペットのような強く明るい音、あるいはDulcianaのような小さな音、といったリード管の選択はコラールの内容にもよります。
桜教会のRegalは、細かい装飾には向いているとは言えないでしょう。

オルガン音つくりの第一歩 第16回

<問題>
フランソワ・クープラン( 1668- 1733)「教区のミサ」も最後となりました。後半のサンクトゥス・ベネディグトゥス・アニュスデイから選んで課題とします。アトリオンオルガンで考えてみてください。
ミサも後半です。
Sanctus (聖なるかな)は、天使たちが天井で歌う栄光と賛美の歌。
・“Plein chant du premier Sanctus en Canon”
・2e Couplet. “Recit de Cornet”

Benedictusは17世紀当時、聖変化(パンと葡萄酒がキリストの体に変化すること)の場所で歌われていました。
・“Chromhorn en Taille”

Agnus dei(神の子羊)は聖体祭儀(聖餐式)に用いられます。この2曲は以前に触れたレジストレーションなので省略します。

Deo gratias は、司祭のIte missa est.(ミサは終われり)を受けDeo gatias(神に感謝)と応えます。
・“Petit plein jeu”

<解答>
・“Plein chant du premier Sanctus en Canon”
すべてのパートをグラン・プラン・ジュで、2つのカントゥス・フィルムスをペダルのトランペット8(+クレロン4)で1オクターブ下げて弾く

・2e Couplet. “Recit de Cornet”
ソロ部分は一般にRec.のCornetで奏されます。伴奏部はPos.あるいはG.O.のBourdon8, Prestant4(Flute4)、あるいはBourdon8, Montre8を用います。トレモロ指示はありません。

・“Chromhorn en Taille”
ソロ部分はPos. Bourdon8, Prestant4, Cromorne8。ショーモンとルベーグはこれにNazardを加えています。伴奏部は、G.O.の(Bourdon16あるいはMontre16), Bourdon8, Prestant4(ショーモン)。コレットは2本の8’を伴奏に充てています。ペダルはTierce en Tailleと同様。

・“Petit plein jeu”
Pos.でのプラン・ジュ

オルガン音つくりの第一歩 第15回

<問題>
今回はグロリアの後半と、人々が神にさまざまなものを奉納する(今でいう献金)ために行列する際に演奏される「奉献唱」です。
まずは、Qui tollis peccata mundi, suscipe deprecationem nostram.にあたるTierce en Taille からです。

  • Tierce en Taille (テノール声部をティエルスで)
    クープランに限らずフランス古典の中では、単独で取り上げられることの多い曲です。
  • Dialogue sur la Voix humaine (ヴォワ・ユメーヌによる対話)
  • Dialogue en trio du Cornet et de la Tierce(コルネとティエルスの3声の対話)
  • Offertoire sur les Grand jeux (グラン・ジュによる奉献唱)
    この曲も単独で演奏される機会の多い曲です。

<解答>
Tierce en Taille
Tierceは、Jeu de Tierceというストップの組み合わせのことです。Pos.のBourdon8 Prestant4,Nazard,Doublette,Tierceが基本で、そこにLarigotが加わることもあります。 伴奏部(右手)はG.O.でBd16,Bd(あるいはM)8, Prestant4 が基本。ただし、Tierceとのバランスを考える必要がある。
ペダルは、8フィートが基本になりますが、手鍵盤の伴奏部に16フィートを用いると声部の逆転が起こることがあります。その解決策のひとつが第一鍵盤(G.O)のカプラーを用いてペダルを奏する、あるいはルベーグのように伴奏部はM8,Bd8と2つの8フィートを充てることもひとつの解決法になります。

Dialogue sur la Voix humaine
ソロ部分 G.O. VH8,Bd8,Fl4(P4)
伴奏部  《Jeu doux》 Pos. Bd8,Fl4
これにTremblant(トレモロ)をかけます

Dialogue en trio du Cornet et de la Tierce
この曲はフランス古典期の3段鍵盤の楽器を想定して書かれています。 Tierce とCornetは似たような組成の音です。Cornetは単独の鍵盤で構成されていることもあります。
アトリオンでの場合、Pos. Bd8,P4,Nazard,Tierce G.O.Bd8,F4,Quinte で対話して、伴奏部は第3鍵盤Fl8 ,Fl4 ペダルはM8などで試されたらいかがでしょうか?(あくまでひとつの可能性ですが)

Dialogue sur les Grands jeux
フランス古典の特徴的な響きを形成する組み合わせ
Pos. Bd8 ,P4 ,Nazard, (D2),Tierce,Cromorne
G.O. Bd8, P4, Nazard, D2, Tierce,Cornet, Trompette,Clairon
これにカプラーをかけます。
第32小節目からのCornet Separeは左手のPos.と同じ鍵盤で弾くことも可能です。

Offertoire sur les Grands jeux
このフランス古典としては長大な曲は、3つの部分から構成されています。
前半は上述のようなグラン・ジュの組み合わせで、Cornet Separeは右手と同じPos.で対応します。ペダルはM8のみ
中央部の第2エピソードは、Fonds d’orgue (G.O. Bd16, M8,Bd8,P4+Pos. Bd8,P4)で演奏されることもあるが、これはクープランの時代のいかなるテクストにも著わされていないため、グラン・ジュのままでも可能。
後半のジグの部分はグラン・ジュ。

オルガン音つくりの第一歩 第14回

<問題>
前回取り上げましたフランソワ・クープラン(Francois Couperin 1668- 1733)「教区のミサ」Messea l'usage ordinaire des paroissesのキリエに続いて今回はグロリアの前半です。グレゴリオ聖歌とオルガンが交互に演奏する形で進められます。アトリオンのオルガンで考えてみて下さい。
*“imslp”による楽譜検索は「Francois Couperin→Collections→Pieces d’orgue→organ Scores→Messe pour les paroisses」



1 . Plein jeu
オルガンタイトル
1 Plein jeu
2 Petitte fugue sur le Chromhorne
3 Duo sur les Tierce
4 Dialogue sur les Trompettes, Clairon et Tiercees du
GC et le Borudon avec le Larigot du Positif
5 Trio a 2 dessus de chromhorne et la basse de Tierce


<解答>
・Plein jeu
G.O. Bd16, M8, P4, D2, Fourniture,,Cymbal
Pos. Bd8, P4, D2, Fourniture
Ped. Trompete8
Pos./G.O. G.O./Ped.

・Putite Fugue sur le Chromhorne
Pos. Cr8, Bd8. あるいはCr8, Bd8, P4

・Duo sur les Tierce
右手 Pos. Bd8, P4, (D2), Nazard, Tierce, (Larigot)
左手 G.O. Bd16, Bd8, P4, Quinte, Tierce

・Dialogue sur les Trompettes, Clairon et Tierces du G.C. et le Bourdon avec le Larigot du Positif.

Pos. Bd8, Larigot
G.O. Bd8, P4, Quinte, (D2), Tierce, Trompette8, Clairon

Pos.のレジストレーションはフランス音楽では珍しい組み合わせです。カプラーのかからないグラン・ジュの伴奏として用いられていました。

・Trio a 2 dessus de Chromhorne et la basse de Tierce
右手 Pos.Cr8, (Bd8), (F4あるいはP4)
左手 (Bd16), Bd8, P4,(D2)Quinte, Tierce

オルガン音つくりの第一歩 第13回

<問題>
2018年、今年はフランソワ・クープラン生誕350年です。そこで彼の「教区のミサ」を順番にみていきたいと思います。ミサの通常式文をグレゴリオ聖歌とオルガンが交互奏する形で進められます。今回はキリエ

  1. 1.まずは、オルガンでKyrie eleisonにあたる”Plein chant du premier Kyrie, en Taille.”
    次にグレゴリオ聖歌で”Kyrie eleison”
  2. 2.オルガンでKyrie eleisonにあたる“Fugue sur les jeux d’anches.”
    グレゴリオ聖歌で”Christe eleison”
  3. 3.オルガンでChriste eleisonにあたる“Recit de Chromhorne.”
    グレゴリオ聖歌で”Christe eleison”
  4. 4.オルガンでKyrie eleisonにあたる“Dialogue sur la Trompette et le Chromhorne”
    グレゴリオ聖歌で”Kyrie eleison”
  5. 5.オルガンでKyrie eleisonにあたる“Plein chant”

フランス古典は基本的にタイトルがレジストレーションを示しています。また、中央集権国家だったため、オルガンのスタイルもほぼ統一されています。 レジストレーションに関する記述も多く残されていますので、時代により若干異なりますが、それらを参考に現代のオルガンで考えることになります。 オルガンはアトリオンの楽器で考えてください。アトリオンの楽器も基本はフランス古典期の楽器ですので、比較的レジストレーションは容易で、かつ非常に美しく響きます。

フランス古典のレジストレーションに関してはフランス語のwikiにも掲載されていますが、 第12回のギランのマニフィカトなども参照してください。
https://fr.wikipedia.org/wiki/Registration#La_registration_dans_l'orgue_classique_francais

<解答>
1. Plein chant du premier Kyrie, en Taille.(テノール声部による第一キリエ) テノール声部には、Pedalleの指示があります。フランス古典期の楽器にはペダルに16フィートはなく、トランペットの8‘を用います。手鍵盤はG.O.のBourdon16から始まるプリンシパルコーラスとPos.のBd8から始まるプリンシパルコーラスを結合します。そして、ペダルに第一鍵盤の音を重ねます。(当時の楽器はG.O./Ped.のカプラーのみ持っていました。)

2. Fugue sur les jeux d’anches.(リード管によるフーガ) これはFugue grave と呼ばれる重厚なフーガで、G.O.のトランペット8を中心に、Bd8, Prestant4を重ね、そこにNazardやTierceを加えることも可能でシャピュイ氏はそれを推奨しています。また、Pos.Cromorneをカプラーで重ねることも可能です。

3. Recit de Chromhorne.(クルムホルンによるレシ) ソプラノ声部にPos.のクルムホルンを持ってきますが、これにBd.8やFl.4を加えることもできます。伴奏部はJeu douxの表記がありますので、G.O.のBd.8 Fl4(あるいはP4)

4. Dialogue sur la Trompette et le Chromhorne(トランペットとクルムホルンの対話) この曲のレジストレーションについては、クープランの同時代者の序文の中に見当たりません。グラン・ジュの1つのヴァリエーションと考え、Pos. Bd8,P4,Cromorne G.O. Bd8,P4 TrompetteにカプラーPos./G.O.を用います。

5. Plein chant(プランシャン) これもプラン・ジュつまり最初のプリンシパル・コーラスと同じで、ペダルはトランペット8にカプラー。あるいは手鍵盤でバス声部も同時に弾きます。

オルガン音つくりの第一歩 第12回

<問題>

今回はちょっと目先を変えて、フランス古典のレジストレーションを考えてみましょう。


Jean-Adame Guilainの第2旋法による組曲です。オルガンとグレゴリオ聖歌の交互奏のために書かれたものです。ギラン、クレランボー、ドゥ・マージュなどフランス古典で「組曲」とタイトルを持つ作品は、マニフィカト(聖母マリアの祈り)と考えられます。マニフィカトは聖務日課の晩課/Vesperaeに用いられます。
Prelude (Plein jeu)―Tierce en taille―Duo―Basse de trompette―Trio de Flutes―Dialogue―Petit plein jeuの全7曲から成ります。


フランス古典はタイトルがレジストレーションを表しています。ですから原則を知っていれば比較的容易かもしれません。ただし、フランス古典の音を上手く再現できるオルガンはそう多くはありませんので、フランス古典期の楽器の響きを知ることも重要になってきます。オルガンはアトリオン音楽ホールの楽器から考えてみてください。フランス古典が非常に美しく鳴る楽器のひとつです。
http://imslp.org/wiki/Pi%C3%A8ces_d'Orgue_pour_le_Magnificat_(Guilain%2C_Jean-Adam)


<解答>

・Prelude (Plein jeu) 

    プラン・ジュはプリンシパル・コーラスと考えればよいので、
    G.O. Bd16 M8 P4 D2 Fourniture Cymbale
    Pos. Bd8 P4 D2 Fourniture
    U/T


・Tierce en taille

    テノール声部にTierceすなわちコルネの成分。伴奏部分(右手)はfonds。

    伴奏にプリンシパルの音を入れますが、アトリオンのオルガンでは強すぎるので、
    G.O. Bd16 Bd8 (Fl4)。
    また、当時の楽器はペダルに16‘を備えていないため、G.O.と足鍵盤のカプラーを用いると、声部の逆転を回避できると考えられています。(当時の楽器にはG.O.とのカプラーのみありました)ただ、現代の楽器ではペダルに16’があるので、
    Ped. M16のみ、あるいはSb16 F8

    Tierceはポジティフを使います。
    Pos. Bd8 P4 Nazard D2 Tierce (Larigot)


・Duo 

    これには左手にリード管を用いる場合と16’から始まるGrosseTierceを用いる場合があります。

    左手 G.O. Bd16 F8 P4 Quinte D2 Tierce あるいは F4 Voix-Humaine
    右手 Pos. Bd8 P4 Nazard D2 Tierce これを基本に、もしVoix-Humaineでバランスが取れない場合は、D2を抜くなど調整します。


・Basse de trompette

    G.O. Bd8 P4 Trompette
    Pos. Bd8 P4


・Trio de Flutes

    G.O. Bd8
    Pos. Bd8 U/T


・Dialogue 

    これはグラン・ジュと呼ばれる音の組み合わせを用います。
    G.O. Bd8 P4 Cornet Trompette Clairon
    Pos. Bd8 P4 Cromorne (Nazard Tierce) U/T


この曲の場合、4つの鍵盤を使用するとみなすことができます。本来は第3鍵盤、第4鍵盤とも上声部のみパイプの置かれたCornetを用います。ただ、アトリオンでは第3鍵盤にコルネ成分はないので、Hautboisなどを用いて代用することも不可能ではありません。が、45小節からエコーとして使われるので、エコーの部分でPos.からCromorneを抜くという可能性もあります。


ペダルは最後の2小節の全音符の低音にBombardeを用いて鍵盤と重ねると重厚になります。


・Petit plein jeu

    たった11小節の小さな曲ですが、これはAmen あるいはIte Missa Estにあたります。
    Pos. Bd8 P4 D2 Fourniture


オルガン音つくりの第一歩 第11回

<問題>

前回はシンプルなフランクの作品を取り上げました。今回は彼の作品をもう少し深めてみたいと思います。有名な「前奏曲、フーガとヴァリエーション」を見てみましょう。楽譜は
http://imslp.org/wiki/Pr%C3%A9lude%2C_Fugue_et_Variation%2C_Op.18_(Franck%2C_C%C3%A9sar) からダウンロードできます。 この曲もフランクの指示が書かれています。そこに注意しながらアトリオンの楽器をイメージして考えてください。

<解答>

曲の冒頭の指示がレジストレーションを表しています。

前奏曲:

    R. Flute8’ Basson-Hautbois8’ 右手の旋律
    G.O. Bourdon8’ 左手の伴奏部
    Ped. Soubasse16’ Flute8’
    これを基本にするとよいでしょう。

    フランクの楽譜では左手が32小節から43小節までP.に移ることになっていますが、この指示はそれほど気にする必要はないと思います。また、39小節から42小節までペダルに4‘か8’を足すと指示されています。ここは、アトリオンでしたらP.Bourdon8’をPos./Pedのカプラーをかけるとバランスがよいです。ペダルの4’はプリンシパルなので大きくなりすぎます。

Lento:

    R. Flute8’ Gambe8’ Prestant4’ Flute 4’ Hautbois8’ Trompette8’
    P. Salicional8’ Bourdon8’ Prestant4’ Flute 4’
    G.O. Bourdon16’ Montre8’ Bourdon8’ Prestant4’
    Ped. Montre16’ Soubasse16’ Montre8’ Flute8’
    R./P. P./G.O. P./Ped. G.O./Ped.
    ※R./P. P./G.O.をかけると手鍵盤ではR./G.O.が入ります。また足鍵盤ではR./Pedが入ります。

フーガ:

    R. Flute8’ Gambe8’ Hautbois8’
    P. Salicional8’ Bourdon8’
    G.O. Montre8’ Bourdon8’
    Ped. Montre16’ Soubasse16’ Montre8’ Flute8’
    R./P. P./G.O. P./Ped. G.O./Ped.

    136小節目にR.の16’とリード管を入れると指示があります。
    ここで、G.O.Bourdon16’ R. Trompette8’ Prestant4’くらいを加えるとよいでしょう。リード管の4‘がレガールのようなものでなければそれを加えてもよいです。

ヴァリエーション:

    R. Flute8’ Basson-Hautbois8’ 右手の旋律
    G.O. Bourdon8’ 左手の伴奏部
    Ped. Soubasse16’ Flute8’
    冒頭のプレリュードと同じレジストレーションです。177小節から180小節までペダルにP.Bourdon8’をPos./Pedを足す。

オルガン音つくりの第一歩 第10回

<問題>

今回は、フランクのパストラールを通してカヴァイエ・コルの目指したロマン派のサウンドをどう作るのかを考えていきましょう。アトリオン音楽ホールのオルガンをイメージしてください。 楽譜はimslp から Category:Franck, Cesar 、Pastorale op.19で探せます。

<解答>

曲の冒頭に R. Hautbois, Flute de 4, Bourdon de 8 、P. Bourdon de 8 et de 16 、Ped. Bourdon de 8 et de 16 、Accouplement du R. au P. という指示があります。これはカヴァイエ・コルの楽器を用いたレジストレーションの指示です。オーケストラ・サウンドを目指した楽器ですから、バロック期のものとはかなり異なります。

R. はRecit鍵盤 P.はPositf鍵盤です。ちなみにG.O.はGrand Orgue 主鍵盤です。

アトリオンの楽器ではG.O.とP.はアルザスのジルバーマンの楽器が基本となっています。ですからこれはほぼフランス古典の仕様です。ただ、ホールの楽器としてはあらゆる時代の楽曲に対応できる必要があり、R.はちょっとだけ!ロマン派に対応できるようになっています。

アトリオンにはR.にBourdonがありませんので、Flute a cheminee 8で代用します。また、P. には16フィートがありませんので、G.O.のBourdon 16とBourdon 8を用いることで対応します。Ped.はSoubasse 16 とFlute 8です。

Accouplement du R. au P.はカプラーです。アトリオンではR.とG.O.のカプラーになります。

Quasi allegrettoでは、新たな指示があります。Ajouez la Tromp. du R.、Tirasse du P.です。Ajoutezは加える、つまりR.のトランペット8‘を加えるということです。Tirasse du P.はペダル・カプラーをかけるという意味です。実は、フランスの楽器では R.とP.の手鍵盤カプラーがかかっている時にTirasse du P.を入れると、R.のペダルカプラーも連動するように設計されています。

さて、今考えてきたアトリオンのレジストレーションではR.とG.O.を使っていますので、この場合、R.鍵盤とG.O.鍵盤の2つのペダルカプラーを入れることになります。


Andantinoの手前5小節から、Otezという単語が現れます。これは取るという意味です。Quasi allegrettoで加えたトランペット、ペダルカプラーを順次取って、冒頭と同じレジストレーションに戻します。


このように書かれた指示からどういうレジストレーションができるのかを考えていく作業が、フランスのロマン派以降の作品では必要になります。

オルガン音つくりの第一歩 第9回

<問題>
D. ブクステフーデ(D.Buxtehude 1637−1707)
  「暁の星のいと美しきかなWie schon leuchtet der Morgenstern」BuxWV223
コラール・ファンタジアの早期の例。ブクステフーデのコラール編曲の中でも良く演奏される作品です。
足鍵盤は最後にほんの少し加わるだけです。
楽譜は、Imslp⇒D.Buxtehude ⇒Collections ⇒Samtliche Orgelwerke VolumV⇒Organ ChoralesU: Fantasiasから探せます。
以下のような楽器から考えてみてください。

第1鍵盤(HW)

第2鍵盤(Pos)

ペダル(Pd)

1.Prinzipal 8

1.Gedackt 8

1.Subbas 16

2.Rohlflote 8

2.Gemshorn 4

2.Prinzipal 8

3.Oktave 4

3.Waldflote 2

3.Gedacktbass 84

4.Oktave 2

4.Larigot 11/3

4.Choralbass 4

5.Mixtur V−W

5.Sesquialtera U

5.Trompete 8

6.Vox Humana8

6.Krummhorn 8

U/T,T/P,U/P


<解答>
回答例
色々な可能性がありますが、シンプルな一例です。
T.01    Hw 6 Pos 4
T.30    Hw 1
T.58    Pos 1,2,3,(4)
T.74    Pos 1,2
T.77    Hw 2,3
T.131   Hw 2
T.136   Hw1,3
T.156   Hw 1,3,4
T.169-176   Echo Pos 1.2 Hw1,3
T.177   Hw 1,3,4 Pd 1,2

オルガン音つくりの第一歩 第8回

<問題>
“今回はちょっと目先を変えて、ロマン派の小品にトライしてみましょう。ラインベルガー(Josef Gabriel Rheinberger 1839- 1901)はミュンヘンで活躍したオルガニスト、教育者です。彼は20曲に及ぶオルガン・ソナタを残しました。その第11番の緩徐楽章によく演奏されるカンティレーヌがあります。今回はこのシンプルな曲をレジストレーションしてみましょう。楽器は以下のようなものです。”

第1鍵盤

第2鍵盤

ペダル

Prinzipal 8

Gedackt 8

Subbass 16

Röhlflöte 8

Gemshorn 4

Gedacktbass 8

Oktave 4

Waldflote 2

 Choralbass 4

Oktave 2

Cymbale U

Trompete 8

MixtureV‐W

Sesquialter 2fach

Dulcian 8

U/T,T/P,U/P

 

 


<解答>
旋律をどういう音色で弾くかということがポイントです。
例えばPrinzipal 8’、Oboe 8’ 、ちょっと高くなるかもしれませんがGedackt 8’ +Gemshorn 4’+Nasat22/3 などを試してみましょう。
また、ずっと同じ音色ではなく転調したときに音色を変えるということも考えられます。
第1鍵盤を旋律にしたら、第2鍵盤はGedackt 8が伴奏でしょう。ただし小さすぎれば4フィートを加えシャッターを閉じるなどの方法もあります。
第2鍵盤を旋律にしたら、伴奏はRöhlflöte 8’を用います。
ペダルはSubbass 16 +Gedacktbass 8
いずれにしても、バランスのよい音楽的な音を見つけていく作業が必要です。

オルガン音つくりの第一歩 第7回

<問題>
J. P. スウェーリンク(1562–1621)は、オランダ、アムステルダム旧教会で活躍した作曲家、オルガニストです。北ドイツ・オルガン楽派の育ての親で、シャイデマン、シャイト等北ドイツ・オルガン楽派の重要な作曲家たちを輩出しました。今回は、スェーリンクの作品から「わが青春は過ぎにけり 'Mein junges Leben hat ein End', SwWV 32」を取り上げます。変奏曲の形式です。
オルガンは いつもとちょっと異なります。

 

第1鍵盤

第2鍵盤

ペダル

Prinzipal 8

Gedackt 8

Subbass 16

Röhlflöte 8

Gemshorn 4

Gedacktbass 8

Oktave 4

Waldflote 2

Choralbass 4

Oktave 2

Quinteflöte 11/3

Trompete 8

MixtureV‐W

Sesquialter 2fach

 

 

Regal 8

U/T,T/P,U/P

楽譜は、imslp, Category:Sweelinck, Jan PieterszoonCompositions by: Sweelinck, Jan Pieterszoon のVの項にあります。


<解答>
J. P. スウェーリンク(1562–1621)の変奏曲「わが青春は過ぎにけり 'Mein junges Leben hat ein End', SwWV 32」は、各変奏ごとにレジストレーションを変えます。

Variatio は、Regalから試してみましょう。Regalはどの声部も同じ強さで聞こえます。
Secunda variatioは、第2鍵盤 Gedackt 8+Gemshorn 4
Tertia variatioは、第2鍵盤 Gedackt 8+Gemshorn 4+Waldflöte 2
Quarta variatioは、第1鍵盤 Röhlflöte 8+Oktave 4
Quinta variatioは、第2鍵盤 Gedackt 8+Gemshorn 4+Waldflöte 2+Quinteflöte 11/3
Sexta variatioは、Regal あるいは第1鍵盤のRöhlflöte 8 116小節目からは第2鍵盤のGedackt 8で更に小さくすることも可能です。

これは一例ですが、太いプリンシパルやトランペットのような大きなリード管、大きなミクスチュアを用いることは避けます。

オルガン音つくりの第一歩 第6回

<問題>
パッサカリアは、オスティナート・バスに基づく変奏曲です。
J.S. バッハのパッサカリアとフーガ
ハ短調は、レスピーギがオーケストラ編曲するなど名曲として知られています。また、オルガン講座でもパッヘルベルのチャコーナ(これもパッサカリアと同じようなオスティナート・バスに基づく曲です。)を弾かれた方も多いと思います。
今回はブクステフーデのパッサカリアニ短調 D. Buxtehude Passacaglia, BuxWV161を取り上げてみましょう。
この曲はニ短調‐ヘ長調‐イ短調‐二短調と4つの部分から成り立っています。これを踏まえた上でレジストレーションを考えてみてください。
楽譜はIMSLP http://imslp.org/ カテゴリ 作曲家B Buxtehude, Dietrich
検索P Passacaglia, BuxWV161 から探すことができます。
オルガンはいつもの規模です。

 

<解答>
1例として、
T.01 第1鍵盤 Prinzipal 8  ペダル Subbass 16  Gedacktbass 8
32 第1鍵盤 +Oktave 4  ペダル +Choralbass 4
    47 第2鍵盤 Gedackt 8  Gemshorn 4  Waltflöte 2
 Quinteflöte 11/3  (右手ソプラノ用)
64 第1鍵盤 +Octave 2  ペダル Subbass 16  Trompete 8
    93 第2鍵盤 −Quinteflöte 11/3
95 第1鍵盤 Prinzipal 8  ペダル Subbass 16  Gedacktbass 8

95小節目からニ短調に戻るので最初と同じレジストレーションにしてみました。64小節目から第1鍵盤の2フィートまで入れましたが、それを95小節目まで待ち最後にプリンシパルの8,4,2フィートでも良いと思います。
いずれにしても、転調したときの音のバランスに注意してください。

オルガン音つくりの第一歩 第5回

<問題>
8月2日の公開講座で使われたD.Buxtehudeの「神はわが砦 BuxWV184 Ein feste Burg ist unser Gott」を取り上げます。オルガン用の楽譜はネットから見ることはできませんが、ギター用に編曲された楽譜から形を知ることができます。ソプラノ声部に装飾されたコラール旋律をおくコラール前奏曲です。
このコラールは、宗教改革者、マルティン・ルター(1483−1546)の作詩(1527-1529)/作曲になる、反福音主義勢力との戦いに臨んで神への熱烈な信頼をうたうものです。
訳詞(Wikiより)を記しておきます。
私たちの神はかたいとりで よい守りの武器です。神は私たちを苦しみ、悲惨から助け出してくださいます。古い悪い敵はいま必死にあがいており、その大きな勢力と策略を用いて 攻撃してくるので 地上の存在でこれに勝てる者はおりません。
オルガンは以下の仕様で考えてみましょう。


第1鍵盤

第2鍵盤

ペダル

Prinzipal 8

Gedackt 8

Subbass 16

Röhlflöte 8

Gemshorn 4

Gedacktbass 8

Oktave 4

Waldflote 2

 Choralbass 4

Oktave 2

Cymbale U

Trompete 8

MixtureV‐W

Sesquialter 2fach

Dulcian 8

U/T,T/P,U/P

<解答>
◆ソプラノに装飾されたコラール旋律を持つ曲と言えば、バッハの名曲『おお人よ、汝の大いなる罪を嘆け』や、オルガンの初歩の方でも弾きやすい『最愛のイエスよ、われらここに集いて』などを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
これらの作品は決して力強いレジストレーションで弾くことはありません。けれど、『神はわが砦(やぐら)』は、マルティン・ルターの決然とした意思を示すもので、非常に力強いレジストレーションが必要となります。
ソプラノは、第2鍵盤のGemshorn4,CymbaleU,Sesquialtera 2f, Dulcian8とリード管に高く鋭いミクスチュアやSesquialteraを混ぜます。北ドイツオルガン楽派の作品ではよく使われるソロのレジストレーション法です。
伴奏部分は手鍵盤Prinzipal8、ペダルは16,8,4。
北ドイツオルガン楽派の作品では、手鍵盤が8’を基準とする場合はペダルも8’となるのが一般的です。もし、手鍵盤が16’を基準としたレジストレーションの場合はペダルも16’を基準とします。ただ、特別にスタイルを持たない現代の小さなオルガンでレジストレーションすること、またソロのボリュームがかなり大きいため、今回はペダルを16’から始めました。

オルガン音つくりの第一歩 第4回

問題はこちら
今回は、ちょっと上級者向けですが、バッハの17のライプツィヒ・コラール集から考えてみましょう。

まずは、比較的弾きやすい曲から、
◆「おお罪なき神の子羊よ O Lamm Gottes,unschuldig 」BWV656
3つのコラール詩節を通作した曲です。それぞれの詩節にどういうレジストレーションをしたらよいか考えてみましょう。

そして、いわゆる「トリオ」と呼ばれる曲
◆「主イエス・キリストよ、われらを顧みたまえ Herr Jesu Christ, dich zu uns wend」BWV655

今回は以下のようなディスポジションのオルガンで考えてみてください。


第1鍵盤

第2鍵盤

ペダル

Prinzipal 8

Gedackt 8

Subbass 16

Röhlflöte 8

Gemshorn 4

Gedacktbass 8

Oktave 4

Waldflote 2

 Choralbass 4

Oktave 2

Quinteflöte 11/3

Trompete 8

MixtureV‐W

Sesquialter 2fach

Cromorne 8

U/T,T/P,U/P

楽譜:http://imslp.org/wiki/Category:Bach,_Johann_Sebastian から@「参照」の項目Bach-Gesellschaft Ausgabe をクリックします。A「4.34 Band 25.2: Orgelwerke. Band 2」をクリックすると自動的にスクロールします。Bその中の「18 Chorale Preludes BWV651-668」をクリックし、下へスクロースして「楽譜ファイル」を探します。B「楽譜ファイル」2.1.1 Complete最初に掲載されているものは自筆譜(Manuscripts)なので、その次の「Complete Score」からダウンロードします。

解答はこちら

◆「おお罪なき神の子羊よ O Lamm Gottes,unschuldig 」BWV656

コラールの3節を通作した作品です。第1節はソプラノに定旋律が置かれ、3声の手鍵盤のみ、第2節も同じく3声で定旋律はアルトに置かれています。第3節は定旋律がペダルにおかれた4声部の構造となっています。第3節では下降する半音階の和声が「そうでなければ私たちの望みは絶えただろう Sonst müssten wir verzagen」という歌詞を表現しています。
第1部は、プリンシパルの8+(4)、第2部はそこに4(2)フィートを加え、第3部はミクスチュアを加えたプリンシパル・コーラス、ペダルは16、8,4、トランペット8を基本として考えれば良いと思います。あとは、プリンシパルの8+4が大きすぎれば、第2鍵盤の8+4と第1鍵盤プリンシパル8とカプラーをかけてみるなどの工夫をして調整していきます。

◆「主イエス・キリストよ、われらを顧みたまえ Herr Jesu Christ, dich zu uns wend」BWV655

これはいわゆる「トリオ」の形で書かれています。トリオのレジストレーションは、8+4+11/3 , 8+2のような中を抜いたレジストレーションが多用されたこともありました。これは、ゴットフリート・ジルバーマンのオルガンから考えられたレジストレーションの可能性があるということです。バッハの活躍したザクセン、チューリンゲン地方のヴェンダー・オルガンのように、弱い発音のViola da Gambaを持っているような楽器では、いくつかのプリンシパルではない8フィートと、左手もプリンシパルではない4フィートを組み合わせオクターブ下げて演奏することもできます。
例に示したような楽器から考えると、右手は第2鍵盤8+4+(2)、左手は4プリンシパルで1オクターブ下げ、ペダルは16+8で試してみることも可能でしょう。その他、右手は第2鍵盤8+4+11/3、左手はRohlflöte8+2なども考えられます。いずれにしても、バランスの良いレジストレーションを見つけることが大切です。ペダルは16フィートを必ず入れてください。

 

オルガン音つくりの第一歩 第3回

問題はこちら
今回もJ.Sバッハの作品から。皆さんも一度は弾いたことがありそうな有名な曲を取り上げてみました。どんな音がふさわしいか想像してみてください。
◆J.S.バッハ作曲 前奏曲とフーガ ホ短調 BWV533
◆オルガン小曲集より「Nun komm der heiden heiland BWV599 いざ来たりませ、異邦人の救い主」
オルガンは前回と同じ日本基督教団西千葉教会のオルガンです。

 

解答はこちら
◆J.S.バッハ作曲 前奏曲とフーガ ホ短調 BWV533
「前奏曲とフーガ」はプレヌム(簡単に言えばプリンシパルの8’, 4’ ,2?’ ,2’, Mix 、ペダルのプレヌムには16’ あればTranpete8’を加えたもの)を想像します。勿論、大聖堂ではプレヌムで堂々と演奏することも可能ですが、小さな会堂などでは、Mix.が強すぎると感じる場合もあります。そのような場合には、8’ 4’ 2’でも大丈夫。ペダルにリード管も用いずに演奏します。ただ、BWV533のような短い作品では可能でも、長く重厚な前奏曲とフーガでMixを抜くと、曲のイメージに対して音が軽すぎてしまいます。場所とオルガンの響きに留意して適切なプレヌムを用いることが重要です。
◆オルガン小曲集より「Nun komm der heiden heiland BWV599 いざ来たりませ、異邦人の救い主」
オルガン小曲集の最初の曲で、1ページという短いコラールです。クリスマスの4週間前から始まる待降節に使用されるコラールです。故吉田實先生は、キリストの誕生を静かに待つという意味で、プリンシパル8’一本でとおっしゃったことを覚えています。(ペダルはそれに合わせて16’,8’)
一方、それは「王」(マタイによる福音書第21章第1〜5節)であるキリストの誕生の意味を持ち、プレヌム(場合によっては手鍵盤にも16’)で堂々と演奏することもできます。バッハはカンタータ「Nun komm der heiden Heiland BWV61」第一曲で、このコラール合唱をフランス風序曲で縁取りました。フランス風序曲は王の入場に奏されるような性格を持っていますから、BWV599も、短いながら堂々とプレヌムで奏するのもよいかもしれません。

 

オルガン音つくりの第一歩 第2回

問題はこちら
今回もJ.Sバッハの曲からコラールを2曲。皆さんも知っている有名な曲を取り上げてみました。どんな音がふさわしいか想像してみてください。1曲目は「受難」のコラール、2曲目は「クリスマス」に用いられるコラールです。

◆「おお人よ、汝の大いなる罪を嘆け」BWV622 オルガン小曲集より
◆「目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声」BWV645 シュープラー・コラール集より

オルガンは前回と同じ日本基督教団西千葉教会のオルガンです。


第一鍵盤

第2鍵盤

ペダル

Prinzipal 8

Gedackt 8

Subbass 16

Rohlflote 8

Gemshorn 4

Gedacktbass 8

Oktave 4

Nasat 22/3

 

Oktave 2

Waldflote 2

U/T

MixtureV‐W

Terz 13/5

T/P

Trompete 8

Cromorne 8

U/P

楽譜:http://imslp.org/wiki/Category:Bach,_Johann_Sebastian から@「参照」の項目Bach-Gesellschaft Ausgabe をクリックします。A「4 Contents 4.34 Band25.2 Orgelwerke Band2 」をクリックすると自動的にスクロールします。Bその中の「Das Orgelbuchlein BWV599-644」をクリックし、下へスクロースして「楽譜ファイル」を探します。最初に掲載されているものは自筆譜(Manuscripts)なので、「Editions」があらわれるまでさらに下へスクロースします。C「編集者 Wilhelm Rust (1822から1892) 
出版社情報: Bach-Gesellschaft AusgabeBand 25  Leipzig: Breitkopf & Hartel, 1878. Plate B.W. XXV. 著作権: Public Domain 」が見えたら、さらに下へスクロースし「 O Mensch, bewein’dein’ Sunde gross, BWV 622」をダウンロードします。
「目覚めよ、と呼ばわる物見らの声」もAまでは同じ手順。「6 Choral Preludes,BWV645-650」をクリックし、目次を見て 2.楽譜ファイル「 2.1 .3 Wachet auf,ruft uns die Stimme,BWV645」をクリックしてダウンロードしてください。

 

今回はJ.S.バッハのコラールを2曲
◆オルガン小曲集から「おお人よ、汝の大いなる罪を嘆け」BWV622
バッハのコラールの中でも良く知られた受難のコラールで、マタイ受難曲第一部の最終曲としても使われています。装飾されたコラール旋律がソプラノにおかれ、コラール旋律と左手の伴奏部は別の鍵盤で演奏されます。

歌詞は
人よ、汝の大いなる罪を悲しめ。
そのゆえにこそキリストは父のふところを捨て
地にくだりたまいぬ。
清く優しきおとめより、
ここなるわれらのために生まれたまえり、
こは執り成しの仲保者とならんがためぞ。
死せる者には生命を与え、
すべての病を制したまえり。
かくして時は迫り来て、
彼はわれらの犠牲としてほふられ、
われらの罪の重き荷を
長き十字架の苦しみもて負わんとしたもう。(杉山 好 訳)

ソプラノのソロ部分は細かく装飾されていますので、発音の遅いリード管を用いることはできません。
第2鍵盤のフル−管 Gedackt 8, Gemshorn 4, Nasat 22/3でソプラノを、第1鍵盤のRohlf?te 8、ペダルはSubbass 16, Gedacktbass 8が一般的なレジストレーションといえます。その他、ソプラノ・ソロをプリンシパル8'で演奏することも可能です。
この曲の場合、21小節目の1拍目、2拍目は伴奏部とソプラノが一緒になって和声として動くため、伴奏と同じような音色を用いる方が適当ではないかと考えることもできます。その場合はプリンシパル8'でソロを演奏すると良いでしょう。ただし、左手がGedackt8だと弱くバランスが悪くなると思われます。また、8'、4'という組み合わせにすると、伴奏部がソプラノよりも高い音域に来るため好ましくありません。このように伴奏とのバランスもとても重要になります。

◆シュープラー・コラール集から「目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声」BWV645
カンタータ第140番第4曲テノールのアリアをオルガン用にバッハが編曲したものです。

歌詞は
目覚めよ、とわれらに呼ばわる/ 物見らの声、いと高き望楼より日々けり、/ 目覚めよ、エルサレムの街よ!/ 時刻は いましも真夜中にかかる/ その呼ばわる声 さやかに告げていう、/ 汝ら畏き乙女は いずこなるか?/ いざ目覚めよ、花婿は来ます、/ 起き出でて燭火を取れ!/ アレルヤ! 身支度を整えよ、/ 婚礼の筵に出ずべく。/ 行きて花婿の君を出迎えまつれよ! (鳴海 史生 訳)
このコラールはマタイ伝第25章(1から13節)がもとになっています。

楽譜の頭には解答とバッハには珍しいレジストレーションの指示があります。しかし、単純に8'、8'、16'と3つのストップを出して演奏すると言う意味ではありません。ベースになるものと考えた方がよいでしょう。
コラール旋律のテノール8'はリード管かプリンシパル8'と考えることができます。NasatやTerzのような倍音管は低音部で分離してしまい使うことはできません。

では、歌詞の内容から華やかで堂々としたトランペット8'で弾いてみましょう。伴奏部は8'、4'、2' まで入れないとバランスが取れません。
第1鍵盤 Trompete 8 第2鍵盤 Gedackt 8, Gemshorn 4, Waltfl?te 2 ペダル Subbass 16, Gedacktbass 8

もう一つの可能性は
第1鍵盤 Prinzipal 8 第2鍵盤 Gedackt 8', Gemshorn 4'  ペダル Subbass 16, Gedacktbass 8

レジストレーションは実際の楽器との対話です。基本は基本。その都度楽器に向き合ってふさわしい音を探し出してください。

 

解答はこちら
◆オルガン小曲集から「おお人よ、汝の大いなる罪を嘆け」BWV622
バッハのコラールの中でも良く知られた受難のコラールで、マタイ受難曲第一部の最終曲としても使われています。装飾されたコラール旋律がソプラノにおかれ、コラール旋律と左手の伴奏部は別の鍵盤で演奏されます。

歌詞は
人よ、汝の大いなる罪を悲しめ。
そのゆえにこそキリストは父のふところを捨て
地にくだりたまいぬ。
清く優しきおとめより、
ここなるわれらのために生まれたまえり、
こは執り成しの仲保者とならんがためぞ。
死せる者には生命を与え、
すべての病を制したまえり。
かくして時は迫り来て、
彼はわれらの犠牲としてほふられ、
われらの罪の重き荷を
長き十字架の苦しみもて負わんとしたもう。(杉山 好 訳)

ソプラノのソロ部分は細かく装飾されていますので、発音の遅いリード管を用いることはできません。
第2鍵盤のフル−管 Gedackt 8, Gemshorn 4, Nasat 22/3でソプラノを、第1鍵盤のRohlföte 8、ペダルはSubbass 16, Gedacktbass 8が一般的なレジストレーションといえます。その他、ソプラノ・ソロをプリンシパル8’で演奏することも可能です。
この曲の場合、21小節目の1拍目、2拍目は伴奏部とソプラノが一緒になって和声として動くため、伴奏と同じような音色を用いる方が適当ではないかと考えることもできます。その場合はプリンシパル8’でソロを演奏すると良いでしょう。ただし、左手がGedackt8だと弱くバランスが悪くなると思われます。また、8’、4’という組み合わせにすると、伴奏部がソプラノよりも高い音域に来るため好ましくありません。このように伴奏とのバランスもとても重要になります。

◆シュープラー・コラール集から「目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声」BWV645
カンタータ第140番第4曲テノールのアリアをオルガン用にバッハが編曲したものです。

歌詞は
目覚めよ、とわれらに呼ばわる/ 物見らの声、いと高き望楼より日々けり、/ 目覚めよ、エルサレムの街よ!/ 時刻は いましも真夜中にかかる/ その呼ばわる声 さやかに告げていう、/ 汝ら畏き乙女は いずこなるか?/ いざ目覚めよ、花婿は来ます、/ 起き出でて燭火を取れ!/ アレルヤ!  身支度を整えよ、/ 婚礼の筵に出ずべく。/ 行きて花婿の君を出迎えまつれよ! (鳴海 史生 訳)
このコラールはマタイ伝第25章(1から13節)がもとになっています。

楽譜の頭にはDextra 8 Fuß、Sinistra 8 Fuß、Pedal 16 Fußtとバッハには珍しいレジストレーションの指示があります。しかし、単純に8’、8’、16’と3つのストップを出して演奏すると言う意味ではありません。ベースになるものと考えた方がよいでしょう。
コラール旋律のテノール8’はリード管かプリンシパル8’と考えることができます。NasatやTerzのような倍音管は低音部で分離してしまい使うことはできません。

では、歌詞の内容から華やかで堂々としたトランペット8’で弾いてみましょう。伴奏部は8’、4’、2’ まで入れないとバランスが取れません。
第1鍵盤 Trompete 8 第2鍵盤 Gedackt 8, Gemshorn 4, Waltflöte 2 ペダル Subbass 16, Gedacktbass 8

もう一つの可能性は
第1鍵盤 Prinzipal 8 第2鍵盤 Gedackt 8’, Gemshorn 4’  ペダル Subbass 16, Gedacktbass 8

レジストレーションは実際の楽器との対話です。基本は基本。その都度楽器に向き合ってふさわしい音を探し出してください。

2月発行かわら版レジストレーションクイズ

問題はこちら
◆J.S. バッハ 小フーガ ト短調 BWV578
◆J.S. バッハ? オルガン小曲集から「われ汝を呼ぶ、主イエス・キリストよ」BWV639
を次のような楽器で演奏する場合、どんなレジストレーションができるでしょうか?


第一鍵盤

第2鍵盤

ペダル

Prinzipal 8

Gedackt 8

Subbass 16

Rohlflote 8

Gemshorn 4

Gedacktbass 8

Oktave 4

Nasat 22/3

 

Oktave 2

Waldflote 2

U/T

MixtureV‐W

Terz 13/5

T/P

Trompete 8

Cromorne 8

U/P

解答はこちら
◆小フーガト短調の演奏にはいくつかの可能性があります。
まずは、「プレリュードとフーガ」を演奏する際の「プレヌム」と呼ばれるプリンシパルコーラスを使う方法。これは華やかで壮大な小フーガとなります。この楽器でしたら第一鍵盤のPrizipal 8 ,Oktave 4 ,Oktave 2 ,Mixtureでプレヌムが作れます。それではこれに見合うペダルの音を考えてみましょう。Subbasse 16, Gedacktbass 8 だけでは少々心もとないかな?と思ったら、カプラーをかけて手鍵盤の音をペダルに降ろします。音が重ならないならば第一鍵盤T/Pがふさわしいと考えられますが、もし手鍵盤の音とペダルの音が多く重なる曲でしたら第二鍵盤Gedackt 8, Gemshorn 4, Waldflote 2を出してU/Pをかけてみましょう。このような小型の楽器ではペダルストップが少ないのでカプラーが活躍します。
また、プレヌムからMixtureを抜いたPronzipal 8, Oktave 4,Oktave2で弾くこともできます。これは小フーガでは標準的なレジストレーションだといえます。ペダルはSubbasse 16, Gedacktbass 8, に第二鍵盤 Gedackt 8, Gemshorn 4をカプラ−U/Pをかけてみましょう。もう少し軽い音がよければ第二鍵盤 Gedackt 8,Gemshorn 4,Waldflote 2も可能です。その場合はペダルはSubbasse 16, Gedacktbass 8だけ、あるいは第一鍵盤のOktave 4にカプラーT/Pをかけるなどが考えられます。

もうひとつの可能性として、フーガを4フィートピッチで弾くこともできます。フルート4がふさわしいのですが、この楽器ではGemshorn 4となります。Gemshornは倍音が多く含まれ比較的音が細いため、あまり良い響きを得られないかもしれません。その場合はOktave4でもトライしてみましょう。ご自分のイメージに合って演奏しにくくなければGemshorn 4 でもOktave4でも大丈夫です。ペダルは8フィートで演奏します。ここではGedacktbass 8を使えば大丈夫だと思います。

◆J.S. バッハ? オルガン小曲集から「われ汝を呼ぶ、主イエス・キリストよ」BWV639
この名曲はコラール旋律がソプラノにおかれ、ほとんど旋律に装飾がなされないタイプのものです。コラール旋律に装飾が少ない場合、リード管を使用することができます。
リード管を使用する場合、コラールのテクストの意味が重要になります。それによりTrompeteのような大きな音のリード、Krummhorn、Dulzian, Regalなどを用います。
BWV639のコラールではKrummhornを用いるのが標準的です。ここではフランス語のCromorne 8となります。もし、リードがなければプリンシパル8でも大丈夫です。
これに対して左手は、フルートの音がふさわしいでしょう。ここでは第一鍵盤のRohlflote 8を用います。ペダルは、Subbass 16, Gedacktbass 8でよいでしょう。

いかがでしたでしょうか?次回をお楽しみに!(香取智子先生)